説得力のあるビジネス文書の作り方

現代はクロスボーダーの時代です。業種も文化も異なる人々が、対面・非対面に関わらず取引が行われている中で、正確さと伝わりやすさを備えたビジネス文書の役割は、今後ますますビジネスシーンで重要になってくることは間違いありません。

マネジメントパワー・コンサルティングは、あらゆる業務情報の見える化に取り組んでいます。ここでは、その一端として、説得力(納得性)の高いビジネス文書の作り方について、その考え方とテクニックの一端をご紹介します。

ビジネス文書は片方向のコミュニケーションツール

ビジネス文書の性格と特徴とは

ビジネス文書には、お客様からの問合せへの回答や事故やトラブルに対する報告、技術や商品に関する情報提供やビジネス上の決定事項の通知などがあります。

文書を読んで、書き手の意図することを理解または納得してもらうことが文書の基本機能です。別の見方をすると、文書は片方向のコミュニケーション手段と言えるのではないでしょうか。

会議や電話などの双方向コミュニケーションと決定的に違うのは聞き返しや言い直し、シナリオの変更などががその場でできないことです(書き手が、その場にいないことが前提です)

このようなコミュニケーション手段の特徴の違いに注目すると、ビジネス文書にとって大切なものが見えてきます。つまり、双方向コミュニケーションで実現する相互理解を、ビジネス文書では、目を通すだけで実現させるための仕掛けが必要なのです。


事実や検討結果に基づく意見を一方的に伝えるもの

情報や意見を伝えるための文章には、随筆文や論説文、実務文などがありますが、主なビジネス文書は、顧客等からの問合せへの回答や報告、顧客等に対して発信する案内や通知などであり、そのほとんどは、事実や検討結果に基づく意見を一方的に伝えるツール、つまり「実務文」であると言えます。

実務文に必要なのは伝達力

よく、「自分は文章力が無くて」などと言うことを聞きますが、「文章力」って何でしょうか?

ビジネス文書の目的は、結果として読み手に自分(自社)の見解(意見)を伝えることです。けっして美しい言葉や卓越した表現力は必要なく、結果として誰でも一様に理解・納得してもらうことが大切です。

つまりビジネス文書における「文章力」とは「伝達力」と言い換えることができます。

文章力、情報力、語彙力、表現力、伝達力、構成力、生産力

ビジネス文書に必要なのは伝達力であり、それは情報力と構成力で決まるといっても過言ではない。


伝達力とは、伝えたい意見を事実の集まりに語らせること

例えば、当社商品の品質不良についてのクレームを文書で求められたことを想定します。

この場合はまず、お客様が直面した「事実」を、いつ、どこで、誰が、どのように利用した時の問題なのかを多面的に聞き取り、与件事実として整理する必要があります。その上で、その事実と当社商品との因果関係を明確にします。追加の顧客環境の調査や当社内での仮説検証などを通して、新たな検証・確認事実を追加する必要もあるかもしれません。このように、事実情報を多面的に収集する力が「情報力」です。

次に、事実調査の結果、品質クレームがお客様の過度の期待であることが分かった場合、その見解を、積み上げた事実の組み合わせによって説明する必要があります。単に、「お客様の期待が過度だから、当社の商品の問題ではない」「そんなの期待しすぎだ!」などという、紋切り型や感情的な意見を繰り返してもお客様の納得は得られません。お客様は、理解可能な「事実」でしか、当社の意見(見解)を信頼できません。このように、事実を組合わせることで、「意見」(見解)を構成する力が「構成力」です。

以上のように、ビジネス文書に大切な文章力つまり伝達力は情報力と構成力が主な中身で、一般的な文章力を語るときに出てくる、語彙力や表現力は二の次と言っても言い過ぎではありません。何と言っても、結果として意見が伝わることが大切なのです。クロスボーダーの時代では、ビジネス文書で使用する言語は英語になりますので、語彙力や表現力より情報力と構成力に頼らざるを得ないという事情もあります。


「事実」とは?

「事実」とは、調査やテストにより、その真偽を客観的に判定できるものの事を言います。ビジネス文書の対象としては、顧客トラブル現象や市場不良、お客様の声(要望・不満)などありのままの状態のことを言います。また、当社における仮説検証結果や調査結果なども「事実」になります。



「意見」とは?

「意見」とは、書き手の主観的な「思い」とは異なり、事実の集まりに語らせる書き手の見解の事を言います。あらゆる「事実」を組み合わせて、一つの妥当性のある結論に導く、そのプロセスそのものがビジネス文書における「意見」です。



ビジネス文書の組立(報告書の例)

感情的な意見を排除して、事実情報を収集した上で、それらを目的に沿って配列することで、読み手が納得できる結論に繋げることが、ビジネス文書として最も大切なことになります。

押さえておきたい執筆テクニック

ビジネス文書に大切なのは、情報力と構成力の結果としての伝達力であり、語彙力や表現力は二の次であるとは言いましたが、文章を読みやすくするための基本はありますので、簡単に書いておきます。

  • 事実と意見は明示的に分けて記載する。
  • 文章は「総論→各論」「既知→未知」などのように展開の順序に気をつかう。
  • 読み手のメンタルモデルを意識する(読み手がどのように理解するのかを意識する)
  • 文章はパラグラフ(文のかたまり)を使って書き、一つのパラグラフでは一つの事を述べる。
  • パラグラフの先頭には要約文を置く。
  • 並記する場合は、正しく並列に書く(パラグラフ、文、語句の単位で、同じ種類、同じ形にする)
  • 一文は「短く」よりも、「一つのことだけ」を意識して書く。
  • 簡潔に書く。

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